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2021-01-22 17:00

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富士通ゼネラル 佐藤光弘氏が語る健康経営のこれまでの歩みとビジョンとは?

株式会社富士通ゼネラルは「人を思い活かす経営」を全ての事業活動の基本とし、2017年4月に専任部署「健康経営推進室」を設置し、健康経営の取り組みを始めています。

同社の健康経営の取り組みは「日本の人事部」が主催する「HRアワード2020」企業人事部門に入賞しており、日本企業への健康経営の普及にも従事している健康経営のリーディングカンパニーになります。

10年以上健康経営の取り組みに携わってきた日本を代表する健康経営の有識者である佐藤光弘氏に健康経営のこれまでの歩みと未来について取材させて頂きました。

インタビュイー

株式会社富士通ゼネラル
サステナビリティ推進本部 健康経営推進部長 佐藤光弘氏

1984年富士通株式会社に入社。99年沖縄富士通システムエンジニアリング総務課長、2004年に富士通に復職し、マーケティング本部人事部担当部長として、当時のSEに働き方改革・構造改革に従事し、2008年健康推進本部健康事業推進統括部長として、富士通グループ全社員の健康推進体制の構築、2012年東京大学・日本生産性本部共同設立の「健康いきいき職場づくりフォーラム」設立準備会メンバーとして参画、2016年4月株式会社富士通ゼネラル人材開発部主席部長として出向。2019年より一般社団法人社会的健康戦略研究所にて理事として設立メンバーとして参画、翌年よりCSR推進本部がサステナビリティ推進本部に改称され、その下部組織として健康経営推進部を設置。同部長と人材開発部主席部長を兼務し担当。

– 本日はよろしくお願いします。佐藤さんが健康経営に携わるきっかけはなんだったのでしょうか?

10年前に東京大学で精神保健学を専門とされている川上憲人先生、当時一橋大学にいらして経済学専門の守島基博先生、慶應大学にいらしてポジティブメンタルヘルスを専門とされている島津明人先生と企業の代表の私の4名を中心に、いきいきとした職場をどのようにつくっていくかというテーマで「健康いきいき職場づくりフォーラム」という組織を作りました。それがきっかけになります。

– 最近はメンタルヘルスについても理解が進んだと思いますが、当時は印象も今とは違ったのではないでしょうか。

当時はネガティブなイメージを持たれがちでしたが、明るく楽しくイキイキとした職場を作るにはどうしたらいいのかという観点から研究するフォーラムを作りました。

今ではいろんな企業が参画しています。もともと健康経営という言葉の前に、企業に健康を根付かせるために『健康会計』というキーワードで似たような取り組みがありましたが、産業保健の分野では馴染まなかったんです。

そして、経済産業省が健康経営を始めたのは日本の健康、医療のビジネスを東南アジア、企業に発信することが目的でした。

それに追随して、健康経営に関わるビジネスを活性化させていこうというのが経済産業省の目的でした。

ですが、健康経営って産業保健の領域からすると余計なことになるんですよね。そもそもお医者さんは病気を治すことが第一ですから。

だから、お医者さんにとっては第一に職場環境を改善しようとは思わないですよね。

– 確かに職場環境の改善に産業医の人から協力を得ることは難しそうですし、彼らの専門外の分野だと思います。どのように実現に向け活動をされていたのか教えてください。

職場環境をチェックするための指標として、ストレスチェックが2015年に制定されました。

ストレスチェック自体には2つの大きな目的があって、1つ目が社員のストレスを可視化すること。2つ目が組織全体の状態を可視化することです。

経営者はストレスチェックから見えたストレス状態から、職場環境の改善につなげることができるんですよ。

このように組織のストレス状態を可視化し、イキイキとした職場につなげる『職場マネージメント』ができる良いノウハウを横展開して行きはじめたんです。

– 最近はいろんな組織の評価制度がありますが、正直に言うと信憑性があるのかよくわからないんですよね。

従業員満足度調査、〇〇サーベイとか色々あるじゃないですか。

でも、本質的にストレス状態を見る方法はいろんな方法がありますけど、それが可視化できるようになっているのがストレスチェックです。

そのストレスチェックというのは10数年前からやっているんです。

– 富士通さんが開発したストレスチェックシステムもありますよね。「e診断」とはどのようなシステムなのでしょうか。

「e診断」は厚生労働省が指針を定める「職業性ストレス簡易調査票」と、「仕事のストレス判定図」をベースとするストレスチェックをもとに、従業員へのアンケートの実施から、回答結果の収集、診断、分析までをトータルに行えるクラウド型のストレスチェックサービスです。

東京大学と富士通が連携して作り、2001年の提供開始以降、継続的な機能強化を重ね、現在累計約950社217万IDの発行実績があります。

開発当時はストレスチェックに対するエビデンスも存在していなかったですが、労働安全法の改正によりストレスチェックが義務化された時に、ストレスチェックの項目は、東京大学との研究の成果である「職業性簡易ストレス調査票」の57項目をベースにして作られています。

– 2020年時点で6,204社が健康経営優良法人になっていますが、これまで企業が行ってきた健康経営の取り組みで課題に感じていることはありますか?

本質的でない取り組みが目立ちます。ブラックなイメージがついている企業がホワイト500を取り、企業イメージの向上が目的になっていますよね。

例えば、健康経営優良ブランドの認定を継続するために、食育のサービスをやらないといけないとかね。

健康をビジネスしている企業も若干言い過ぎている感じがあると思います。

その辺は課題として認識していて、『社会的健康戦略研究所』という社団法人ができまして、私は理事をやっています。

– 『社会的健康戦略研究所』には私が今まで取材した企業の方も何名か所属されていました。どのような活動をされているのでしょうか?

『社会的健康戦略研究所』では産学連携し、健康を文化にするための活動をしています。経済産業省がリードする健康経営は企業が稼ぐ力をキーワードに企業に健康経営を普及しています。

しかし、基本的には健康のリテラシーを高め、健康を企業文化にしていくのが大事なんです。企業で働いている人は60~65歳ほどで退職した後も、そこから先は100歳ほどまで生きます。

企業にいる間に自分のヘルスリテラシーを高められれば、健康寿命を伸ばすことができます。企業で働いている時間は長いですから、社会全体を考えると企業がサポートしていくべきだと思います。

– ヘルスリテラシーを高めるにはどのようなお取り組みが必要になってくると思いますか?

学生の時に教えなくてはならないと思います。小学校、中学校などで自分の体について健全に生きるための行動を学び、企業もフォローアップをし、産学連携した取り組みが必要です。

健康教育に積極的な投資をし、社員が健康の重要性について気づいてもらうことが大事だと思います。あとは組織のトップの協力は欠かせません。社長が介入すれば社員の健康意識は良くなります。ストレスチェックの健康リスクが改善されたり、職場の環境がよくなったりなど改善できるケースが多いです。

– 御社の健康経営を語るには『健康デザインセンター』が必須だと思います。どのようなところなのか教えてください

ここは健康について考え、各々の健康をデザインして欲しいという目的で作られた場所です。

ワークスペース、イベント開催、仕事の合間にちょっとした運動ができる雲梯(うんてい)、エアロバイク、卓球台があり、体操などできるスペースもあります。

– どのようなイベントが開催されているのですか?

例えばスターバックス主催のセミナーの開催をしています。コーヒーを飲みながら、テーマを作り、ワークショップを開催するとリラックスができて『心理的安全性』が満たされた環境を作れます。

そういうことを地道にやって、今ではイベントの開催が当たり前のように根付いていて、お茶とコーヒーを飲みなながら、集まった人たちで考えて気づいて、学ぶ機会が作れています。

– なぜ御社の社長は健康経営に積極的な考えを持っているのでしょうか?

社長は従業員とその家族のケアを通じて、社内の企業文化を変えたいんだと思います。社員と家族を幸せにするためには利益を上げなきゃいけないし、さらにサステナブルな企業を目指すためにはイノベーションが生まれやすい環境を目指しています。

富士通ゼネラルって文化的には大人しい物づくりの会社ですが、本当は「世界一です」とかそういうキーワードが好きなんですけど、割と最近は大人しい感じになってきています。もっとイノベーションが起きるような時間や、設備を作ったりしていかないと企業は残っていけないという危機感があるんだと思います。

規模感としては2000~3000人規模の会社ですが、事業を継続するには今までの仕事だけでなく、いろんなイノベーションを起こしながら、少しずつ変わっていく必要があると思っています。

– 健康経営を社内文化として浸透させるためのアクションとして、事例があれば教えてください。

よく言われるんですけど、健康経営の取り組みをイノベーター理論に基づき考えると、初めはイノベーターとなる2%~3%の参加率で、そこから10%、更にそれ以上に参加者を増やすことがポイントになります。

私は、筑波大学の久野 譜也先生から教えていただいたやり方を推奨していて、久野 譜也先生は地域で健康経営の活動をしているのですが、健康経営に関わる活動をすると、商店街とかにポスターを貼るんですよ。

仮に企業のトップから協力を得られればそのような活動も社内でできると思いますね。こういうアピールをしていくと、喫煙者の数も減っていき、例えば10人のうち9人がタバコを吸っていなかったら、残りの1人も辞めるようになります。

このような文化の形成ができると、意識しなくても無意識のうちに行動変容になると私は思います。

– これまで佐藤さんの健康経営の活動での実績、富士通ゼネラル社の健康経営の理念をお伺いさせて頂きました。佐藤さんが富士通ゼネラル社に来て、健康経営の担当となってからは何から始めたのでしょうか?

もともと富士通ゼネラルには看護婦さん一人と内科の先生がいて、なんかあったら薬を処方してくれる健康管理室がありました。

この場所を活用し、気軽に健康に関して相談に行ける窓口を作ろうと思いました。そのために、2年かけて全員健康管理室にいき、産業医や産業看護職と全員面談をするようにしました。

面談を通して先生との関係性ができてくると、自分の体調だけでなく、家族の病気、友人の病気などのことで相談にいくようになる。まさに0円ビジネスですよ!

– 健康に投資をすることに前向きでない経営者もまずは今あるリソースの中でできることを探し、徐々に拡大していくのが取り組みを成功させるポイントなのかもしれません。

まずはコミュニティを作ることが大切ですよ。

富士通株式会社の川崎工場では1万5千人の社員がいるんですけど、部活みたいな活動が活発に行われています。部活は運動部と文化部で約50個あります。

同じ趣味を持った人が集まりやすい環境があるとよりコミュティは活性化していきます。

例えば、スポンサーをやらせてもらっているサッカーチーム川崎フロンターレの試合に社長も巻き込んで見に行くなどの活動もしています。

– 御社の話を聞いていると大手企業のイメージが変わりました。世の中の流れに柔軟に対応している文化を感じます。

少しずつですが回数を重ねていけば着実に変わっていきますよ。

例えば、この健康デザインセンターは会員制にしていて、会員が300名ぐらいいるんですよ。ここには卓球台が置いてありますが、卓球ってひとりではできないので、何人かでやっていると会話が生まれます。

修業時間内の10分でも卓球をすることで、コミュニケーションの活性化につながります。このように最近は性善説が基本だと思うので、社員を管理するという考えを少しずつ減らして、働きやすい環境を作っていこうとしています。

– 佐藤さんが考える健康経営には「心理的安全性」がキーワードになるかと思いますが、心理的安全性を生み出す組織づくりのためには何から始めたらいいのでしょうか。

「心理的安全性」って言いますけど、人数が多いと「心理的安全性」を保つのは困難だと思っているんですよ。ちなみにRezony社は社員何名ですか?

– フルタイムメンバーは2名です。

それが理想ですよ。「心理的安全性」の最たるものですよ。2名だと何言ってもいいでしょ(笑)それが企業規模が大きくなってしまうと階層化してしまって、責任の所在が不明確になる。

結局、本当になんでもお話ができる職場って企業規模で変わってしまうと思いますね。

本当になんでも話ができる職場になれば新しいことが生まれてきて、新入社員が入ってきて、こんなことしたらいいんじゃないですかって提案が生まれ、それを中間管理職者が吸い上げて変えていくようになると思いますが、そういう風土って今の大企業にはないですね。

– 友人が働く大企業では社長が社員に対して現場の声に耳を傾ける意識があっても中間管理職者が横槍を入れ、社長まで意見が行き届かないというケースを聞いたことがあります。一方で、このような状況下でも社員の統率力が強いゆえ、チームワークは強く、業績は良い会社だったようです。こういうケースを聞くと、「心理的安全性」って本当に重要なのかと疑問に思ってしまう場面もあります。

企業の事業特性で経営者が社員を第一と考えていても、顧客が第一と言わざるをえない企業もあると思います。

大企業経営者だとそういうケースはよくあって、右向けって言ったら右向かなきゃいけない企業とかありますし、トップから口が裂けても言えない環境の会社があると思います。

だからこそ、大きい企業でもできる限り、風通しのいい環境を作り、「心理的安全性」が保たれる環境を整備するのが僕の夢になります。

編集後記:

佐藤さんは日本を代表する健康経営の有識者です。

取材時には終始、目をキラキラさせながら健康経営を手段とした日本企業のビジョンを話されている姿がとても印象的でした。

日本企業へ健康経営を普及するために土壌づくりから携わってきた佐藤さんに直接インタビューさせて頂き、大変勉強になりました。

佐藤さんが目指す大手企業での「心理的安全性」の確保が実現される未来にワクワクしながらお話を伺わせて頂きました。

佐藤さんから頂いた情報を活用させて頂き、ひとつでも多くの企業のお役に立てるよう情報を発信致します。取材にご協力頂きありがとうございました。

ビズヨガでは健康経営や従業員の健康増進に積極的に取り組まれている企業様に取材を行わせていただいております。
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富士通ゼネラルグループ健康白書
https://www.fujitsu-general.com/jp/health-productivity/index.html