【キーマンに取材】PwC Japanグループの健康経営を通じた組織作りとは?
PwC Japanグループは日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーによって構成されているプロフェッショナルサービスファームです。 監査およびアシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、そして法務における卓越した専門性を結集し、それらを有機的に協働させる体制を整えています。 そんな同社では複雑化している経営課題の解決には従業員の健康の維持が重要なポイントになると捉え、健康経営に注力されています。そんなPwC Japanグループの健康経営を通じた組織づくりについてお話をお伺いました。
インタビュイー
監査法人において約30年間に及ぶ業務経験を有し、金融機関を含む多くの国内、海外企業の会計監査およびアドバイザリー業務に従事している。PwCあらた有限責任監査法人において金融監査部門や財務報告アドバイザリー部門の責任者を歴任し、2014年7月より執行役に就任した。2020年よりPwC Japan合同会社の執行役副代表、およびPwC健康保険組合理事長に就任している。
-本日はよろしくお願い致します。まずは出澤さんはいつ頃から健康経営のプロジェクトに携わるようになったのか教えてください。
私は2020年の7月から健康経営に関わるようになりました。経営戦略の位置付けの中での健康経営やウェルビーイングの概念に着目し、健康経営を展開していくことになりました。
-御社での健康経営ではウェルビーイングがキーワードになると考えているのですが、なぜウェルビーイングという概念に着目されたのですか?-
我々PwCが大切にしているPurpose(存在意義)が大きく関わっています。私たちは「社会における信頼を構築して、重要な課題を解決する」というPurposeを掲げています。今の世の中は課題そのものが複雑化・高度化しています。信頼もいろんなところで失われています。世の中の情報が本当に正しいのか、不安になることも増えているように感じます。現代は信頼を得ることや課題のハードルが上がっていると思っています。
こういった状況の中、私たちのPurposeを実現するには一緒に働くメンバーが心身共に健康であることが重要です。心身共に健康な状態が実現できることで初めて、高度化されている課題に立ち向かうためのスタートラインに立てるのではないかと考え、ウェルビーイングを大事なキーワードにしています。
-ウェルビーイングは人によって定義が変わり判断が難しい側面もあると思います。ウェルビーイングの評価軸は御社でもたれていらっしゃいますか?-
確かにウェルビーイングは定義が難しく、評価軸や数値目標を置いているわけではありません。変に指標を設定するのは逆効果だとも考えています。例えば喫煙率を◯%下げるといった目標を設定してしまうと、数値目標を達成することが目的化してしまうかもしれません。なので、定量的な目標は掲げていませんが、エンゲージメント調査で集計したデータの中で参考になりそうな項目をモニタリングし、変化の推移を観察しています。
-健康経営ではどのようなお取り組みをされているのでしょうか?-
①重症化予防プログラム、②メンタルヘルス対策の推進、③長時間労働対策の推進、④健診・保健指導の徹底(法定義務)、⑤健康増進活動の推進、⑥医療費分析に基づく健保施策の特定と強化など6つの項目に該当する取り組みを、PwC Japan グループとPwC健保組合が緊密に連携しながら実施しています。
-COVID-19の影響によりテレワークが普及したことで、メンタルヘルスの問題が増加傾向にありますが、例えばメンタルヘルス対策はどのようなことをされているのですか?-
メンタルヘルスに関する相談窓口の設置やオンラインで実施できる健康リテラシーを高めるセミナーやイベント実施があります。たとえば、朝の15分、インストラクターによる筋トレやヨガなどを毎週のようにやっています。
-その他に健康リテラシーを高めるセミナーやイベント実施の事例はございますか?
国際女性デーがある3月には、産婦人科の先生を招いて、妊活や出産をテーマに「卵子の凍結保存」について理解を深めるセミナーを開催しました。このような女性特有の身体的理解を性別関わらず深め、キャリアの支援につながるイベントも開催しています。
-このようなお取り組みの反響はいかがですか?-
徐々に成果を感じてきています。社内周知を広めたり、参加しやすい時間帯に設定したり、特にこの1年はオンラインにシフトしましたが、そのほうが参加しやすいこともあり、参加者は増えています。また、9割以上の参加者が内容にも満足している状況です。
-9割の方が満足しているのは非常に高い数値ですね。その他に取り組みの実施による変化を実感されているものはありますか?-
オンラインでの筋トレやヨガは、リフレッシュ効果だけでなく、場所が離れていても同じ時間に参加することで、孤独の解消や、ゆるやかな一体感を感じられるという参加者の声をいただきます。在宅ワークをしていると、一人で淡々と仕事をすることになりがちだと思いますが、リモート環境でも仲間同士のコミュニケーション機会を創出することに繋がっていると感じています。
-最後に社内で健康経営を始めることになった担当の方にまず何から始めると良いかアドバイスがあれば教えてください。-
いろいろなHow(施策)はあると思いますが、改めてその企業のPurpose(存在意義)に立ち返って、それを社内の皆さんと共有することから始めることがいいスタートになるかもしれません。社会に価値を提供するには働く人々の心身の健康維持が不可欠です。経営者も社員も一丸となって、健康を維持していくという共通の認識を持つことが重要かと思います。
編集後記:
徹底した周知と社員の声に耳を傾けることで取り組みの参加者を増やしていき、社内に文化として浸透させるポイントを学ばせて頂きました。テレワークの環境では孤独を感じやすく帰属意識が希薄になりがちだと思います。PwC Japanグループの健康経営の取り組みは健康促進だけでなく、コミュニケーション創出の機会を作り出すことで、チームビルディングに繋がっている側面があると感じました。
この度は取材にご協力頂きありがとうございました。
PwC Japanグループのコーポレートサイト
https://www.pwc.com/jp/ja.html